ここ数週間、インドの企業社会は、同国を代表する企業の一つであるタタ帝国の支配権を巡る争いに揺れている。その結果次第では、インド最大のコングロマリットが劇的に変わり、インド財界全体の姿が塗り替えられる可能性がある。
故ラタン・タタ会長の下、158年の歴史を持つこのグループは、1990年代初頭の経済自由化を経てインド経済の幅広い分野へと事業を拡大した。ITサービス、鉄鋼、ホテル、化学、自動車、電力、さらには紅茶に至るまで事業は多岐にわたる。タタは企業統治の水準と長期的な経営姿勢で長く際立った存在であり、外国人投資家や事業パートナーにとって最初に相談すべき相手となることが多かった。
現在、ラタン・タタの後継者たちは、グループの持株会社タタ・サンズと、その過半数株主である慈善信託の支配権を握ろうと争っている。対立の焦点は、タタ・サンズの取締役会の過半数の支持を得ている業務執行会長N・チャンドラセカランの事業構想と、信託側を代表する会長ノエル・タタの懸念にある。チャンドラセカランは2017年からグループを率い、iPhoneの組立事業や経営難に陥っていたエア・インディアの買収などの取り組みを進めてきた。また、半導体、電池、防衛関連製品といった設備投資の大きい事業にもタタ・サンズを積極的に振り向けている。投資総額は250億ドルに迫る。
問題は、タタ・サンズの連結純利益が5年来の低水準にまで落ち込んでいることと、グループの稼ぎ頭であるTCSのビジネスモデルがAIによって揺さぶられていることだ。傘下企業の業績が改善しなければ、慈善信託への配当が減少しかねず、タタの理念の中心に慈善的な還元があっただけに、これは重大な懸念である。取締役会がチャンドラセカランの3期目の再任を決めた際、ノエル・タタは反対した。さらに双方は、タタ・サンズを株式上場させるかどうかでも意見が対立しており、ノエル・タタは同社を非上場のまま維持することを望んでいる。
出典: Financial Times Companies · 要約:HeadlinesBriefing